『メタボリックシンドロームを紐解けば・・・』-「すべての原因は“摂り過ぎ”にあった!!」
新しい年を迎えて、あなたにお尋ねします。
あなたは昨年、職場等での健康診断、人間ドックは受けられましたか?
その際、どうしても気になる言葉がありますよね。
そうです。『メタボリックシンドローム』(以下、「メタボ」と略す)です。
「特定健診制度」とは?
ご存知とは思いますが、2008年4月から「特定健診制度」(糖尿病等の生活習慣病に関する健康診査)が始まりました。
同制度では、40歳から74歳までの中高年保険加入者を対象に、健康保険者に特定健診の実施が義務化されました。
それと共に、メタボ該当者、またはその予備軍と判定された者に対して、特定保健指導を行うことも義務づけられました。
5年後にはその成果を判定し、結果が不良な健康保険者には財政的なペナルティを課す、という厳しい内容になっています。
これにより、政府は2兆円の医療費の削減を目指すとされています。
メタボの全国調査で分かったこと
少し古いデータですが、厚生労働省が無作為に20歳以上の男性1549人、女性2383人を選んでメタボの全国調査を行いました。
メタボの判定は、内臓脂肪の蓄積を示す目安としてウエストが男性で85センチ以上、女性で90センチ以上を必須条件としました。
さらに血中脂質、血圧、血糖の2つ以上で基準値を超えた人を「疑いの強い人(有病者)」、1つ超えた人を「予備軍」としました。
その調査によると、20代と30代では予備軍を含めてもメタボの該当者は男性で20%前後と低く、女性はゼロに近いという結果でした。
ところが、40歳を境に急増。40~70歳の男性では、有病者と予備軍の合計は50%を超えました。
女性の合計も20%近くに達しました。
メタボは、なぜ問題か?
なぜメタボが問題かと言うと、動脈硬化およびその先の生活習慣病を引き起こしやすくなるからです。
特に、内臓脂肪蓄積が問題です。
内臓脂肪が燃焼する際に発生するスス(煤)を、医学的には「アディポサイトカイン」と呼ぶそうです。
これが、私たちの血管の内皮細胞をさかんに傷つけ、傷ついた血管にできたかさぶたは、血管を硬く変化させて、動脈硬化を起こすそうです。
もう少し詳しくお話すると、アディポサイトカインにも、「善玉」(動脈硬化を予防する)と「悪玉」(動脈硬化を促進させる)があるそうです。
正常な状態では、それぞれの分泌はバランスよく保たれています。
しかし、内臓脂肪が蓄積した状態では、善玉の分泌量が減り、悪玉が過剰に分泌されてしまうそうです。
これに高血圧、高血糖、脂質異常などが加わると、それぞれ単独の場合より、さらに動脈硬化が起こりやすくなります。
動脈硬化は誰にでも起きていますが、メタボの人はその動脈硬化がより早い時期に、強く出現するようになります。
動脈硬化が心筋梗塞や脳卒中などを引き起こすことは、よくご存知ですね。
メタボの診断基準とは?
ところで、あなたはメタボの診断基準をすべてご存知ですか?
メタボの診断基準は、以下のとおりです。
必須項目(内臓脂肪蓄積): 腹囲が、男性は85センチ以上、女性が90センチ以上
それに加えて、以下の選択項目のうち、2項目以上が該当する場合、メタボと診断されます。
1.高脂血症(中性脂肪150mg/dl以上、またはHDLコレステロール40mg/dl未満)
2.高血糖(空腹時で110mg/dl以上)
3.高血圧(最高血圧130mmHg以上、かつ/または最低血圧85mmHg以上)
やたらと数字が多くてチンプンカンプンですね。
実際のところ、数字が多くてお医者さんでも覚えきれないという声もあります。
メタボの本当の意味
Dr.ナグモこと南雲吉則先生(ナグモクリニック院長)が、上記の診断基準からどのような「メッセージ」を読み取ることができるかを、ご自身の著書の中で解説してくれています。
これらの項目に隠されているメッセージとは、以下のとおりです。
ウエストが太い・・・食物の摂り過ぎ(食べ過ぎ)
高脂血症・・・・・・・脂の摂り過ぎ
高血糖・・・・・・・・・砂糖の摂り過ぎ
高血圧・・・・・・・・・塩の摂り過ぎ
そうです。メタボとは、一言で言えば、すべて“摂り過ぎ”が原因だったのです。
ですから、メタボにならないためには、これらのものを摂り過ぎないことが重要だったのです。
具体的には、油の多い食べ物を控えて野菜を多く摂るとか、いろいろあると思いますが、こういうふうに解説してもらえると、すごく分かりやすいですね。
ちなみに、よく出る議論ですが、「腹囲については、男性のほうが体格が大きいのに、女性よりも基準が厳しいのはなぜか」ということです。
その理由は、脂肪には2種類あって、男性はおなかの内臓脂肪がたまりやすい「内臓脂肪型」、女性はおしりや太もも、腰回りなどに皮下脂肪がたまりやすい「皮下脂肪型」だからだと言われています。
男性のほうがメタボのリスクが高いから診断基準が厳しい、と言えるわけです。
「摂り過ぎない」以外のメタボ対策
なお、ご参考までに、その他のメタボ対策としては、運動習慣の取り入れです。
上記の厚労省の調査では、生活習慣病の予防に効果があるとされる、ウォーキングなどの手軽な運動(1回30分以上)を週2日以上、1年以上続けている習慣がある人は、30代が最も低く、男性13.8%、女性13.5%。
60代男女よりそれぞれ20~30ポイントも低かったそうです。
厚労省は内臓の脂肪の蓄積は長い年月をかけて進んでおり、30代の運動不足が40代で急増する引き金の一因とみているそうです。
また、あまりうるさく言いたくありませんが、タバコを吸っている人は禁煙をしたりするなど、生活習慣を少し変えるだけでも効果は大きいそうです。
さあ、あなたも “摂り過ぎ” に注意して、メタボにおさらばを告げ、健康的な生活を送りましょう。
(参考文献: 南雲吉則著 「50歳を超えても30代に見える生き方」 講談社+
α新書、その他の複数の文献を参照)
※上記の内容は、[メルマガ 「ちょっと得する健康ニュース」 2012年6月号]の記事を再検証し、加筆修正してお届けしております。
PS
特定健診・保健指導は、2018年度から制度の運用の見直しが行われています。
http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2017/005882.php
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上記の南雲先生によると、「ゴボウ茶」はメタボの予防にも最適だそうです。
私も毎日、飲んでいます。味も、けっこう美味しいですよ!